反逆の騎士長様
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「これが、女神像の片目…?」
ラントが、私の手の中を覗き込みながらそう言った。
部屋から鞄を持ってきて、再び女神像の前に立つ私とラント。
私の両手に包み込まれているのは、“人喰いの樹海”で私がガルガルにお礼としてもらった宝石だ。
翡翠の輝きや大きさが、目の前の女神像の瞳と酷似している。
と、その時、私達の背後から二つの足音が聞こえて来た。
「二人共、何かあったの…?」
緊迫しているような声に振り返ると、そこには少し息を荒げたアルとロッド様の姿があった。
アルの言葉に、ラントが答える。
「セーヌが、女神像のなくなっていた片目を持っていたんだよ。
今、何かのヒントになればと思って持って来て…」
「本当…?!ちょっとよく見せて。」
アルが私の手の中を覗き込んだ。
「少し借りるね。」と宝石を手に取ったアルは、じっ、と宝石を見つめながら呟いた。
「宝石に刻まれた紋章も、女神像のものと一致するみたいだね。
すごいよ、これで荒れ地に辿り着ける…!」
えっ!
私とラントが目を見開いた時、アルの隣に並んだロッド様が口を開いた。
「片目が見つかったなら話が早い。
すぐに伝承に従って隠し通路を開こう。」
「ど、どういうことですか?」
ラントがそう尋ねると、ロッド様が女神像を見つめながら答えた。
「“女神の涙が落ちる”、“女神の瞳に輝き戻りし時、光への道開かれん”という伝承は、気付けば、ごく簡単な謎かけだ。
謎かけというより、隠し通路を開くための
“手順”といったほうがいいか。」