反逆の騎士長様
第5章*in国外れの荒れ地
騎士長様は戦地に赴く
「みんな、準備は良い?」
午前八時。
城の窓から見える外は、相変わらずの曇天。
静かな廊下に、アルの声が響く。
その声に頷いた私達は、全員揃って一歩を踏み出した。
…コツ…
女神像の前にぽっかりと開いた穴。
その先に伸びる地下への階段。
先頭を歩くロッド様は、昨夜城内で見つけた弓張り用のランプを手にしながら進む。
石造りの階段に足音が響く度に、音が反響して奥へ奥へと誘い込まれているようだ。
その時、ラントと私を挟んで最後尾を歩いていたアルが、壁を見ながら口を開いた。
「…相当古い通路だね。
だいぶ人が足を踏み入れていないようだ。」
確かに、そこら中に蜘蛛の巣が張り巡らされていて、空気がどこか黴臭い。
ジメジメとした空気の肌触りはとても良いとは言えなかった。
するとその時、ロッド様がふと足を止める。
「…扉か。」
ロッド様の声に前方を見ると、階段の終わりの先に、錆び付いた鉄製の大きな扉が見えた。
「まさかここ、“地下牢”なんですかね?」
「女神の導く先が“地下牢”なんて考えたくないがな。」
ラントの言葉にそう眉を寄せて言ったロッド様は、最後の階段を下りると真っ直ぐ鉄の扉の前に立った。
…ギッ
ロッド様が扉に手をかけると、低い音が辺りに響いた。
「…やはり、鍵がかかっているな。」
「まさか、ここまで来て足止めですか…?」
私が尋ねると、ロッド様は小さく呼吸をして目を細めた。
「いや、この際“強行突破”だ。
運良く扉は錆び付いてるみたいだしな。」
え?
すると言い終わるや否や、ロッド様は手にしていたランプを床に置いて、足で扉の強度を測り始める。
そして、足元を確認しながら階段ギリギリまで戻って扉から距離を取った。
と、次の瞬間。
ロッド様は強く地面を蹴って、反動を利用して扉に向かって蹴り込んだ。
ドガッ!!
「「「!!」」」
大きな音が耳に届いた、扉が外れて奥に倒れる。
ドォン!!
扉が蹴破られる音が辺りに響き渡った。
目を見開く私達に、ロッド様は床に置いていたランプを手にして声をかけた。
「ん。進むぞ。」