反逆の騎士長様
その時、暖炉の奥に小さな取っ手が見えた。
!
手を伸ばして掴み、力一杯引っ張る。
…ギィ…!
!!
取っ手は、古びた音を立てながらゆっくり開いた。
奥は真っ暗だが、下に向かっている抜け穴が見えた。
「ラント!見つけた!
ここから逃げられるよ!」
私がそう叫んだ瞬間
騎士の一人が私に向かって手を伸ばした。
っ!
捕まる…!
ぞくり、と背筋が震えた時
ラントが棚に置いてあった地球儀をこちらに向かって投げつけた。
ゴッ!!
鈍い音がして、私の目の前の騎士が頭を押さえて倒れこんだ。
な…ナイスコントロール…!
その時、ラントの声が聞こえる。
「セーヌ!先に行け!」
「!」
短い言葉の中に、ラントの力強い意思を感じた。
…私に、騎士長様を託してくれたんだ。
絶対、逃げ切ってラントを助けに戻ってみせる…!
私は、覚悟を決めて暖炉に手をかけた。
ドレスが邪魔で、うまく狭い扉に入れない。
〜っ!
高いドレスだけど、この際しょうがない…!
私は、急いでドレスの裾を掴んだ。
ビリッ!!
レースやサテンのリボンを取り払い、中のパニエを脱ぎ捨てる。
動きづらい袖の膨らみのデザインを無理やり捲り、裾の生地を破って短くした。
後ろで、ラントが照れて焦ったように何か言っているが、そんなことはどうでもいい。
これなら入れる…!
私は、躊躇なくホコリと蜘蛛の巣だらけの抜け穴へと飛び込んだ。
シュゥゥ!!
抜け穴の先は、滑り台のように下へと続いていて、私は急な斜面を勢いよく滑り降りる。
真っ暗な闇の中に落ちていくような、終わりの見えない感覚がする。
これ、どこまで続いてるの…?!
と、次の瞬間、体がふわり、と浮いたような気がした。
そして、ぼすん!と落下し、柔らかい感触が私を包む。
驚いて足もとを見つめると、ふかふかの草が見える。
どうやら、牧草が積まれている所に落ちたようだ。
…出られた…?
ここはどこだろう…?