反逆の騎士長様


私とラントはその声に頷いて、城の扉に体当たりをするように突っ込んだ。


そのまま城内へと転がり込む。


ひんやりとした空気が頬を撫でた。


と、次の瞬間、目の前に現れたのは最上階の部屋へと続く長い螺旋階段。

そして、その前に立つ、漆黒のマントを羽織ったクロウの姿だった。



…!



一瞬にして、足が止まる。



「…っ!出た…」



ラントはクロウの顔を見るなりそう呟いた。


クロウは道を塞いでいて、まるで番人のように見える。


彼の薔薇色の瞳は、かつて城で見た穏やかな瞳ではなく、ジャナル大臣の部下の瞳をしていた。


ラントは、クロウに向かって剣を構え、クロウをまっすぐ睨みつける。



「…通せ…!」



ラントの言葉に、クロウは口を閉ざしたまま私達を睨みつけた。


言葉を何も口にしないクロウだが、こちらに敵意を向けていることだけはひしひしと伝わってくる。


氷のような冷たい視線に、思わず体が強張った。



すっ



ラントが、私を庇うように前に一歩進み出た。


そして、ギラリ、とクロウを睨みつけながら低く呟く。



「…どかねぇなら、お前に本気で斬りかかるぜ。樹海での借り、返させてもらう。

俺は、あの時とは違うんだ…!」



…!



私は、彼の背中を見つめた。


肩から腕にかけてラントの制服の下にあるのは、樹海でクロウに受けた傷。



…あの時、ラントは隙を突かれて死にかけた。


ロッド様がいなかったら、クロウに殺されていたかもしれない。


樹海での交戦時は、それほど実力や余裕に差があった。


しかし、軽く肩をさすってクロウに剣を向けた今のラントは、昔の彼とどこか違う。


頼もしい背中は、どこかロッド様のそれと重なって見えた。


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