反逆の騎士長様
俺は、ぐっ、と眉を寄せて拳を握りしめた。
…ここで勝たなきゃ…
俺がロッド団長についてきた意味がない。
俺は、団長を支えるためにここに来た。
彼の右腕となるために、ここに来たんだ。
頼りなくて、無防備で、攻めることしか出来なかった俺を、ロッド団長は仲間として認めてくれた。
樹海の時と同じように、セーヌの命を俺に預けてくれた。
国の運命を左右するような大事な任務を与えてくれた。
ロッド団長の信頼を、二度も裏切るわけにはいかない…!
俺が戦う理由…
それは、樹海での夜、セーヌを守ると決めたからだ。
「…!」
その時、俺は、はっ!とした。
“戦う理由”
そのことが、頭の中に浮かぶ。
「…そうか…!」
俺が、そうぽつりと呟くと、クロウは剣を振りながら微かに眉を寄せた。
クロウの太刀を弾きながら、俺はある一つの考えに辿り着いた。
…クロウを倒すことは無理だ。
それなら、いっそのこと“発想を逆転”させればいい。
“奴の命を奪って戦闘不能にすること”が不可能なら、“奴の戦う理由”を無くせばいいんだ…!
俺は、覚悟を決めてクロウに斬りかかった。
ヒュオッ!
クロウが俺の剣筋を読めないはずはなく、難なく躱されて俺の剣は空を斬った。
クロウはその隙を突いて俺の足元を脚ですくう。
「っ!」
足をすくわれ、床に仰向けに倒れこんだ俺に向かって、クロウは容赦なく剣を振り上げる。
ドスッ!!
間一髪のところで体を反転させる。
クロウの剣は、勢いよく床に突き刺さった。
腕の力をバネにしながら立ち上がり、体勢を整えると、クロウは素早く俺に向かって第二の攻撃を仕掛ける。
クロウの突きを躱し、俺は奴に向かって思いっきり蹴りを入れた。
そして、奴の体が微かによろめいた瞬間、俺は一気に魔力を解放した。