反逆の騎士長様



「かかったな…!」



私がラントの名を叫んだ瞬間、ラントはニヤリ、と笑って呟いた。



え…?!


どういうこと…?!



危機的状況の中笑みを浮かべたラントに、クロウも一瞬眉を動かす。


が、クロウは止まることなく、ラントに向かって剣を突き出した。



ザシュ…ッ!



ラントの左肩を、クロウの剣が貫いた。


顔を歪めるラント。


しかし、ラントはそのままクロウとの距離を一気に縮めた。



ガッ!!



私が目を見開いた瞬間

ラントが、クロウの胸元で“何か”を握りしめた。


その瞬間、クロウの顔つきが変わる。



「…!まさか、お前……!」



クロウが無意識にそう呟いたその時

ラントは思いっきり腕を引いた。



ブチッ!!



ラントが、クロウの“ネックレス”を無理やり引きちぎる。

歪んだ魔法陣の浮かぶ魔法石が、ラントの手の中で一瞬鈍く光った。



「…っ!」



クロウがラントの肩から剣を引き抜き、咄嗟にラントから距離をとった。


ラントは、そのままネックレスを地面に落とす。


そして、私がはっ!とした瞬間、ラントが思いっきり魔法石を踏みつけた。



…パキン!!







音を立てて砕け散った魔法石。


クロウの瞳が、一瞬揺れた。



…クロウを縛っていたネックレスが壊れた…?!



その時、ラントが苦痛に顔を歪めながらも、不敵な笑みを浮かべて言い放つ。



「これで、お前の“戦う理由”はなくなった!クロウ。お前はもう、ジャナルの手下なんかじゃない!

まだ、ハゲの命令に従って俺たちと戦うつもりか…?!」



…!



言葉が、出なかった。



まさか、ラントは左腕を犠牲にして、端からネックレスを狙っていたの…?!



「………。」



クロウは、剣を手にしたまま無言になった。


その瞳は、まっすぐラントを映している。


< 138 / 185 >

この作品をシェア

pagetop