反逆の騎士長様
「かかったな…!」
私がラントの名を叫んだ瞬間、ラントはニヤリ、と笑って呟いた。
え…?!
どういうこと…?!
危機的状況の中笑みを浮かべたラントに、クロウも一瞬眉を動かす。
が、クロウは止まることなく、ラントに向かって剣を突き出した。
ザシュ…ッ!
ラントの左肩を、クロウの剣が貫いた。
顔を歪めるラント。
しかし、ラントはそのままクロウとの距離を一気に縮めた。
ガッ!!
私が目を見開いた瞬間
ラントが、クロウの胸元で“何か”を握りしめた。
その瞬間、クロウの顔つきが変わる。
「…!まさか、お前……!」
クロウが無意識にそう呟いたその時
ラントは思いっきり腕を引いた。
ブチッ!!
ラントが、クロウの“ネックレス”を無理やり引きちぎる。
歪んだ魔法陣の浮かぶ魔法石が、ラントの手の中で一瞬鈍く光った。
「…っ!」
クロウがラントの肩から剣を引き抜き、咄嗟にラントから距離をとった。
ラントは、そのままネックレスを地面に落とす。
そして、私がはっ!とした瞬間、ラントが思いっきり魔法石を踏みつけた。
…パキン!!
!
音を立てて砕け散った魔法石。
クロウの瞳が、一瞬揺れた。
…クロウを縛っていたネックレスが壊れた…?!
その時、ラントが苦痛に顔を歪めながらも、不敵な笑みを浮かべて言い放つ。
「これで、お前の“戦う理由”はなくなった!クロウ。お前はもう、ジャナルの手下なんかじゃない!
まだ、ハゲの命令に従って俺たちと戦うつもりか…?!」
…!
言葉が、出なかった。
まさか、ラントは左腕を犠牲にして、端からネックレスを狙っていたの…?!
「………。」
クロウは、剣を手にしたまま無言になった。
その瞳は、まっすぐラントを映している。