反逆の騎士長様
「姫さん、無事か!」
「セーヌさん、怪我はない?!」
颯爽と現れた彼らに、私は目を奪われる。
「ロッド様…!アル……!」
彼らの名前を呼んだ瞬間、頭を吹っ飛ばされた鎧の騎士が、ガシャン!と私とラントの方へと体を向けた。
…?!
一瞬の隙を突かれた私達は、反応が出来ない。
騎士の手には、鋭い剣が握られていた。
まさか、私達を殺すつもり…?!
「姫さん!!」
ロッド様の声が聞こえた。
目を見開いたその時、騎士が私とラントに向かって剣を振り上げる。
ラントが、私を庇うように腕を広げる。
…斬られる………!
あらゆる感情が頭に溢れ、目の前の騎士がくっきりと脳裏に刻まれた
次の瞬間だった。
ガキン!!
ある一本の剣が、騎士の振り下ろした剣を受け止めた。
え…?
視界に映るのは、“漆黒のマント”。
私とラントが、はっ!とした時、鎧の騎士は剣を弾かれ、仲間の騎士達の群れに向かって一直線に蹴り飛ばされた。
ガシャァン!!
ロッド様とアルが、飛んできた鎧を躱すと、体制を崩された鎧達はガタガタと倒れ出す。
その時、私を庇うように前に出ていたラントが、ぽつり、と、呟いた。
「…ク、クロウ………?」
予想していなかった展開に、私とラントは目を見開く。
ロッド様とアルも、言葉を失ってこちらを見ていた。
鎧達の軋む音が響く中、クロウの低い声が耳に届いた。
「…久しぶりだ。
この体に、血が通ったような感覚がするのは。」
…!
クロウは、すっ、と私達へと視線を落とした。
その瞳は、先ほどまでのものとは違う。
どこか、汚れが落ちたような澄んだ瞳。
「…俺はもう、“ジャナルの駒”なんかじゃない。
最後くらい、“騎士長らしく”、姫を守って死ぬのも悪くない。」