反逆の騎士長様
その時、隣を走っていたクロウが、素早く剣を抜いて、ばっ!と背後を振り向いた。
そして、勢いよく剣を振る。
ガキン!
突然背後から飛んできた魔力の矢を、クロウの剣が弾き飛ばした。
クロウは、攻撃の気配を察知する度に剣を振り続けている。
「ねぇ、地下牢に続く道はどこにあるの?!」
必死に走りながらクロウにそう尋ねると、彼はまっすぐ前を見つめながら答えた。
「城内から地下牢に通じる道は、おそらくジャナルの手によって行き止まりにさせられているだろう。
ジャナルが知り得ない、“隠し通路”があるとすれば、ただ一つ…!」
!
まさか…!
「私が軟禁されていた最上階の部屋の暖炉の奥…!」
「あぁ、そうだ。きっとあの通路はジャナルの魔力の影響を受けていない…!」
クロウは、迫って来た鎧の騎士達を次々と剣で貫きながら、私を庇うように動き続ける。
その時、急に目の前の廊下の角から二人組の鎧の騎士達が現れた。
っ!
思わず足を止めた瞬間、クロウが、タン!と素早く床を蹴り、一瞬のうちに騎士達の鎧を斬り裂いた。
ガシャン!ガシャン!!
バラバラになった鋼の鎧を飛び越えるようにして、私とクロウは最上階の部屋へと続く螺旋階段へと走る。
すると、クロウが私に向かって声をかけた。
「地下牢に閉じ込められている王は、港町の毒リンゴで眠らされている。
別の牢に投獄されている王妃を探して王の呪いを解けば、おそらく王の魔力がジャナルの魔力を上回って、この城にかかっている魔法は解けるはずだ。」
…!
ずっと、気になっていた。
一国の王ともあろう方が、ジャナルの魔力に簡単に負けたのは何故なんだろうと。
ジャナルは、大臣として長年、王から信頼を得るために演技を続けた。
それは、毒リンゴで眠らせるための一瞬の隙を作るためだったんだ。
港町で半年前に急に毒リンゴの被害者が出たのも、ジャナルが白雪病の効果を実験するために仕組んだことだったとしたら…
全ての出来事は、繋がっていたということ…?!