反逆の騎士長様



「姫!このまま訓練場を抜けて、螺旋階段を駆け上がるぞ!」



「うん!」



最後の追っ手を斬ったクロウは、私の手を取りながら再び駆け出した。



…もう、地下牢への隠し通路まではあと少しの所まで来た。


追っ手を振り切った今が、地下牢へ向かうチャンスだ…!



カツカツカツ!と、静かな廊下に二人分の足音が響き渡る。


透明な壁で覆われた、天まで届きそうなほどの螺旋階段。


細やかな装飾が施された手すりに手をかけた

その時だった。



「…!」



突然、クロウが薔薇色の瞳を輝かせて足を止めた。


何か異変を察知したような素振りに、私は彼につられるようにして足を止める。



「クロウ、どうしたの?!」



緊迫した様子の彼に嫌な胸騒ぎを感じた瞬間
クロウが辺りへ素早く視線を移しながら、思いもよらぬ言葉を言い放った。



「鎧の騎士達の魔力が一斉に流れを変えた。

城内の足音が一方向に向かって集まっている。」



…!



どくん!



心臓が大きく鳴って、冷や汗が背中を伝う。


城の空気が、変わったような気がした。

まるで、強大な闇の魔力に操られているようだ。



“魔力の流れ”と“足音”が、一方向に向かって集まっている…?


それって……!



最悪の予想が頭をよぎったその時

動揺の混じったクロウの低い声が、耳に届いた。



「俺たちではない誰かが、全騎士に狙われている…!」



!!


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