反逆の騎士長様
俺は、アルトラの言葉に戸惑いを隠せなかった。
俺が何も言えずにアルトラを見つめていると彼は俺に向かって口を開いた。
「城のバルコニーで言ったよな?“僕は、ロッドに聞いて欲しい頼みがある”って。
それを聞いてもらえるまで、僕は君を死なせない。」
アルトラは、半ば強引に俺を支えたまま歩き出した。
レンガ造りの通路を、確かな足取りで進んでいく。
「…セーヌさんを幸せにするためには、お前がいないと困るんだよ。
本当は、分かっているんだろう?セーヌさんの気持ちも、自分の気持ちも…。」
「………。」
ぼそり、と呟かれた言葉に、俺は何と答えていいのか分からなかった。
ただ、アルトラは俺を離そうとはしなかった。
「絶対、ジャナルの魔力を奪うんだ。
死ぬのは許さないよ、ロッド。」
王子の口調で命じられた言葉は、世界で一番優しい命令だった。
俺はそれを聞いて、アルトラを改めて死なせてはいけない奴だと思った。
…悪いな、アルトラ。
その命は聞けないかもしれない。
いざとなったら、俺は迷わずお前の盾になる。
きっと、お前は怒るだろうな。
でも、この決意は揺るがない。
…俺は“騎士長”だ。
安いプライドも捨てられないほど、俺は頑固で、馬鹿なんだ。
俺は、アルトラと共に進みながら、先の見えない未来を必死に探しているような気分になった。
そこにあるのが、たとえ真っ暗な闇だとしても、お前と姫さんの未来は守ってみせるよ。
微かに体の中の呪いが脈打った。
俺とアルトラは、お互いを支え合うようにして、ジャナルの待つ玉座へと向かったのだった。
《ロッドside*終》