反逆の騎士長様
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「はぁ、はぁ、はぁ…!」
コツコツコツ、と地下牢を走る。
暖炉の隠し通路を抜けた先は、ノクトラームの地下牢と全く同じものだった。
薄暗いランプの光を頼りに、ジメジメとした道を走る。
…まずは、王妃様を探さないと…!
私が辺りを見回していた、その時だった。
…ふわり
薄暗い通路に、何か丸いものが浮いているのが見えた。
警戒しながら、それに近づいていく。
「これ…“シャボン玉”…?」
ふわふわと通路を飛んでいたのは、触れたらすぐに割れてしまいそうなシャボン玉だった。
…何故、ここにこんなものが…?
するとその時、シャボン玉の中に、一人の女性の姿が浮かび上がった。
どきり、としたが、よく見ると、彼女は綺麗な琥珀色の髪をしている。
アルと同じ髪の色だ。
手錠のようなもので身動きを封じられているその姿は、かつてのロッド様と重なって見えた。
…まさか、この人は王妃様…?
すると、シャボン玉はふわふわと私を導くように通路を飛んでいく。
…付いてきてってこと…?
私は、ぐっ、と手のひらを握りしめて走り出した。
風に乗って進んでいくシャボン玉を見失わないように追っていく。
すると、少し進んだところで、シャボン玉がぱちん、と弾けた。
「…っ!」
私は、その奥の牢屋が目に入る。
そこには、シャボン玉に映されたままの光景があった。
「…王妃様……?」
私が、ぽつり、と声をかけると、牢の中にいた琥珀色の髪の女性が、ふっ、と顔を上げた。
弱々しいが、瞳の輝きは失われていない。
彼女は、気持ちが込み上げて言葉が出ないようで、顔立ちがアルとよく似ていた。
私は、彼女に向かって声をかける。
「王妃様、初めまして。私は、アルトラ王子達と共に貴方を助けに来たセーヌです。
魔法で、私をここまで導いてくださったのですね。」
「えぇ…!…本当に、本当にありがとう…」
私は、牢越しに彼女に手を伸ばす。
そして、王妃様の腕に手が触れた瞬間、彼女の手を拘束していた手錠が音を立てて外れた。