反逆の騎士長様
バチバチと、体の周りに電流が流れるような感覚に襲われる。
まるで、小さな花火が体のすぐ側で絶え間なく打ち上げられているようだ。
無意識に自身の足元へ視線を落とすと、知らないうちにあらゆるところに傷が出来ていて、切り傷から血が流れている。
…魔力に当てられて、皮膚が切れたんだ。
その時、がくん!と急に体の力が抜ける。
「セーヌさん!!」
その場に膝をついた私に、王妃様が駆け寄った。
前に進みたいのに、息が上がる。
中心に向かうにつれて、呪いの力が強くなっているようだ。
視界がぼやける。
…呪いが、浄化の力を上回っているの…?
王様までは、数メートルの距離。
…あと、少しなのに…!
もどかしさに、歯をくいしばる。
と、その時、私の提げていた鞄から、白い花が顔を出しているのが見えた。
はっ!と、その花に目を奪われる。
純白の小さな花は、枯れることなく強く咲いていた。
“姫さん”
どこからか、低く優しい声が聞こえる。
“あんたならやれる”
「…ロッド様……」
私は、小さく彼の名を呟いた。
ぽつり、と口から出たその名に、心の奥で何かが震える。
私は、鞄からシロツメクサの王冠を取り出しすっ、と目を閉じて額に当てた。
彼の魔法がかけられた王冠は、どこか温かい。
…ロッド様も、戦ってる。
私より、ずっと過酷で命の危険が伴う現場で。
こんなところで、私が立ち止まっていいはずがない。
私は、王冠を手にしたまま立ち上がった。
不安げな表情を浮かべる王妃様に、笑みを見せる。
…ここで倒れたら、姫が廃る…!