反逆の騎士長様
私が乱れている呼吸を整えられずにいると、王様が手を伸ばして私の肩にぽん、と置く。
…ポゥッ…!
温かな光が私の体を包む。
治癒魔法に、どんどん体が楽になっていった。
その時、王様が優しくも威厳のある声で私に言う。
「…その浄化の力…。
貴方は、ドナータルーズの姫だね…?」
「はい…、セーヌ、と申します…!」
私が答えると、王様は優しく眉を下げて言葉を続けた。
「ありがとう…。君のお陰で、私も妻も助かった。
なんとお礼をすればいいのか。」
王様に続くように、うんうん、と頷く王妃様に、私は苦笑しながら答える。
「お礼なんて、とんでもないです。
私は、ずっとアルやロッド様達に守られてここまで来ました。私だけの力ではありません…!」
その時、王妃様が、はっ!としたように私に尋ねた。
「アルトラは、今どこに…?」
王妃様の言葉に真剣な表情を見せた王様に、私は答える。
「アルは、ロッド様と共に玉座に向かいました。
今頃、ジャナル大臣と……」
すると、私の言葉に王様が、すっ!と立ち上がった。
「セーヌさん。悪いが、ゆっくりと礼をしている場合ではないようだな。
私達も、ここから庭へ出て、玉座へ向かおう。」
…!
そうだ。
確かに、早く玉座へ行って、戦況を確認しないと…!
その時、私は、はっ!と思い出す。
「王様!実は、ジャナル大臣が城の形を変えたせいで、庭から城内に戻る道が塞がれているんです…!」
私の言葉に、王様達は驚いて眉を寄せた。
しかし、すぐに王様は顔を上げて言い切った。
「そういうことなら心配はいらない。
私の魔力で、ジャナルの魔法を上書きする」
え…!
私が目を見開いた瞬間、王様は瞳を輝かせて魔力を放出し始める。
パァァァッ!!
翠の光が辺りに広がった。
城全体を包むような大きな魔力に、空気が揺れる。
どこか息苦しい邪気が残っていた地下牢も、王様の魔力で見違えたように重圧がなくなった。
「これで、ジャナルが城にかけた“足止め”の魔法は全て消え去っただろう。
さぁ、急いで息子達のところへ…!」
私は、王様の言葉に大きく頷いて、彼らと共に走り出したのだった。