反逆の騎士長様
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《ラントside》
「くそっ…!
礼拝室ってのはどこにあるんだよ…!」
俺は、有り余る体力を無駄遣いするように城内を走り回っていた。
ロッド団長の呪いを解く“鍵”となる水晶を破壊するという任務を与えられたはいいが、礼拝室が一向に見つからない。
…この城がノクトラームと同じ間取りで作られているったって、俺は生まれてこのかた、神にお祈りなんてしたことない。
イコール、どこにあるのか見当もつかない。
むしろ、神を冒涜するような悪行ばかりを重ねてきた俺は、礼拝室に近づくことさえして来なかった。
…懺悔室とは別なんだよな?
くそ、わからねぇ…!
毎日礼拝すりゃあよかった!
苛立ちにも似た焦りが胸に込み上げる。
…確か、礼拝室は、城に隣接した塔の中だったような気がしたんだが…
なぜか、ノクトラームにいた頃と扉の位置が違う気がする。
城の中は、まるで迷路のように入り組んでいて、先程までは通れた道が、二度目には壁で塞がれていたりするようだ。
「あーっ!また行き止まりかよ!」
曲がり角を超えた先に現れた壁に、俺はつい足を止めた。
…どうなってんだ、この要塞は!
ジャナルのハゲが、城の中をいじくりまわしてるのか…っ?!
するとその時、城の中に強い魔力が流れた。
ジャナルとは別の、温かく優しい魔力。
…!
まさか、これは王の魔力…?!
ってことは、セーヌが王と王妃を助け出したのか…!
と、次の瞬間。
俺の目の前の壁が、すぅっ…!と薄くなって揺らめき始めた。
っ!
驚きで言葉を失っていると、壁の向こうに、うっすらと塔へと続く階段が現れる。
!
王の魔力で、ジャナルの魔法が解けたんだ。
きっと、あの先に隠されていた礼拝室がある…!
俺は、はぁっ!と大きく息をして、勢いよく階段を駆け下りた。