反逆の騎士長様



タッタッタッ…!



二段ずつ飛び越えるようにして進んでいるとやがて終着点に細かい装飾が施された白い扉があるのが見えた。






あれか…!



俺は、勢いよく最後の四段ほどある階段を飛び降り、ダン!と扉の前に降り立った。



ギィ…!



白い扉についている黄金の取っ手を掴み、力一杯引く。


すると、目の前に現れたのはクロウの城で見たような穏やかな顔をした女神像だった。


大理石の床が、女神像に向かって伸びている。


つかつか、と女神像に近づいていくと、像の前にあるガラスのテーブルに、紫の光を放つ水晶が祀ってあるのが目に入った。



…見つけた!



俺は、はっ!として水晶を手に取る。


禍々しい邪気が、水晶の中でうごめいていた。



…これをぶっ壊せば、ロッド団長の呪いは解ける…!



俺は、高々と水晶を持ち上げ、思いっきり床に叩きつけようとした。


俺の手から離れた水晶が、大理石の床に接触する、その瞬間だった。



ブォン…!



突然、水晶の周りに紫の雲が現れ、水晶が床に叩きつけられる際の衝撃が、全てクッションのように吸収されたのだ。


想像していなかった事態に、俺は動揺が隠せない。



な、なんだ、この玉…!


自己防衛システムが備わってるなんて、聞いてねぇぞ!



何度も何度も床に叩きつけて割ろうとするが、結果は全て同じだった。


水晶には、傷一つ付いていない。



「くそっ…!

こんなの、一体どうすりゃいいんだ…」



俺が、焦りの中そう呟いた、その時だった。



…チャリ…



不意に制服のポケットに手が当たった瞬間、小さな音が耳に届く。



…!



その音を聞いた瞬間、俺は、はっ!とした。


急いでポケットに手を突っ込み、その中にあったものを手に取った。


それは、クロウの魔法石の破片だった。



…そうだ!


セーヌの浄化の力が宿ったこの破片を使えば水晶を守る紫の雲を消せるかもしれない!



魔法石の欠片が、ポゥッ、と淡く光る。


俺は、即座にその欠片を水晶に当てた。



…パァッ!!!



と、次の瞬間。


辺りに浄化の光が広がった。


水晶の汚れが、一瞬の内に消え去っていく。






いける、今なら…っ!



俺は、浄化の光が部屋を包んだ瞬間、水晶をガシッと掴んだ。



…これで、これで、やっと団長の呪いが解ける…!


やっと、団長の役に立てる…。



床に向かって思いっきり腕を振り上げる。



「うおぉぉぉりゃっ!!」



俺は、渾身の力を込めて水晶を床に叩きつけた。



《ラントside*終》

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