反逆の騎士長様
突然の提案に、私は一瞬固まってしまった。
何を言われたのか、彼の言葉の意味を理解するのに三十秒はかかった気がする。
「ど、ど、どうして急に…!」
私が必死で心を落ち着かせながら尋ねると、ロッド様は私から、ふいっ、と顔を背けた
「…アルトラに言われたんだ。“ちゃんとセーヌさんと向き合え”って。
“彼女を幸せにしろ”と、頼まれた。」
…!
アルが…?
ロッド様は、こちらを見ずに続ける。
「俺は、ずっと自分の気持ちに気付かないフリをしていた。あんたのことを、“そういう対象”としてみないように、契約を結んだ。
…だけど、呪いが解けて、契約も解消されて、やっと、ちゃんと向き合えるようになった。」
胸が、小さく音を立てた。
ロッド様が、小さく呟く。
「…だが、改まって伝えるとなると、俺は言葉を見つけるのが下手らしい。
こんな形でしか、あんたに気持ちを伝えられない。」
“俺の嫁にでもなるか?”
下手と言っておきながら、そのセリフは極上の口説き文句であることを、彼は気づいていないらしい。
ロッド様の耳は、真っ赤だ。
きっと、頬も赤く染まっているんだろう。
そういうところも愛おしいと思ってしまう。
…今なら、素直に向き合える。
私は、ロッド様の手に優しく自分の手を重ねた。
ぴくり、と反応した彼に、私は伝える?
「…十分です。…嬉しい……。」
ロッド様が、微かに肩を震わせた。
その時、彼がやっとこちらを振り向いた。
日の光に照らされて、ロッド様の碧眼がキラキラと輝いている。
そして、その瞳には頬を染めた私の姿が映っていた。
「…少し、屈んでくれないか?」
…!
ロッド様の言葉に、私は顔を俯かせる。
いつかと同じシュチュエーションに、胸がトクトク、と音を立てた。
ふわり、と優しい感触を頭の上に感じる。