反逆の騎士長様
はっ!として城の方を見ると、赤髪の青年が窓から身を乗り出している。
青年は流れるような動作で窓枠に足をかけ、檸檬色の瞳を輝かせて魔力を放出した。
パァッ!
光に包まれた青年は窓から勢いよく飛び降りそのままロッド様と私の間に着地した。
私は、青い制服を着た彼の名前を呼ぶ。
「ラント!無事だったのね…!」
すると、ラントは私の方を向いて口を開いた。
「あぁ。お前が暖炉に飛び込んだ後、すぐに部屋を出て城中荒らしてやったんだ。
セーヌ。ロッド団長を連れ出してくれて、ありがとな…!」
ラントの言葉に、私は笑顔で頷く。
そして、ふと気になったことを口にした。
「ラント、メイドの服を着替えたんだね?」
私の言葉に、ラントは目を見開く。
そして、むっ、とした表情で私に答えた。
「当たり前だろ!
あんなヒラヒラした服で戦えるかっ!」
そ、そうだよね。
ちょっと残念。
本物の女の子に見えるくらい、結構似合ってたのに。
ロッド様は、ラントをちらり、と見ながら
「メイド…?」と呟いて眉を寄せている。
その時、ラントがキラキラした瞳でロッド様を見つめながら言った。
「ロッド団長、ご無事で何よりです!
お体は大丈夫ですか…?」
!
私は、目をぱちくりさせてラントを見る。
だ…誰?
数十分前、私やジャナル大臣に暴言を吐きまくってた人とは思えない。
かしこまった態度にまばたきをしていると、ロッド様はラントに向かって答えた。
「ラント、お前のお陰で助かった。
姫さんを部屋から出した上に、俺の剣まで持って来るなんて…」
「感謝される程のことじゃないですよ!
俺は、ロッド団長と共に戦えるなら、それで十分です。」
…!
ラントは、本当にロッド様のことを慕ってるんだな。
嬉しそうなラントの顔を見ていると、私まで嬉しくなってくる。
私がそんなことを思った次の瞬間。
騎士達が再び私たちに向かって剣を構えた。
!
戦闘モードに入った騎士達を見ると、ロッド様とラントは、さっ、と険しい顔をした。
ラントは腰に下げていた剣を抜き、ロッド様は地面に突き刺さった剣の柄を、ぐっ、と握る。
ロッド様が引き抜いた剣は、魔力でどくん、と脈打った。
ごくり…。
緊張感が漂い、一気にその場の空気が変わる
その時、ロッド様は小さく口を開いた。
「ラント。」
「!はい。」
ラントの返事を聞いたロッド様は、落ち着いた声で言葉を続ける。
「騎士は斬るな。
たとえ襲われても、だ。」
!
ロッド様の言葉に、ラントと私は目を見開いた。
“斬らない”…?
命を奪わないように、手加減をしながら戦うってこと?
ラントは、動揺したように口を開いた。
「なぜですか?向こうはこっちを殺す気で来るのに…。
操られているとはいえ、奴らが“仲間”だからそういうことを言うんですか?」
…!
ラントの言葉に、ロッド様は騎士達を見つめながら答える。
「いや。ここで斬ったら、ノクトラームの防衛力が落ちるからだ。
操られているとはいえ、この国を守る騎士の数を減らすわけにはいかない。」