反逆の騎士長様


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「ん、これはセーヌの服。

高いもんじゃないけど、身分を隠すには丁度いいだろ。」



…ここは城を出た先にある、郊外の森。


ひとまず身を隠すことにした私達は、旅に持っていく着替えや食料を揃えていた。


ラントが私に差し出した服は、シンプルながらも可愛らしいデザインのワンピースだった。



「わぁ…!ありがとう!

ドレスなんかより、こっちの方がずっといい…!」



私がそう言ってワンピースを手に取ると、ラントは顔をしかめながら「やっぱり、お前は変な姫だな。」と呟いた。


…まぁ、普通のお姫様だったらドレスとか着慣れているだろうし、高価な装飾が施されている方がいいんだろうけど…

私は昔から、草原を走り回って育ったいわゆる“田舎の姫”だ。


ドレスは、式典や城で稀に開かれるパーティでしか着たことがない。

…動きにくい服は、苦手だし。



その時、ラントは私を見つめて言った。



「ま、服の礼なら俺じゃなくてロッド団長に言うんだな。

それを選んだのも買ったのも、全部団長だし。」






そうだったんだ。


私は、ワンピースに袖を通しながら、私に背を向けているラントへ声をかける。



「ロッド様はどこにいるの?」



「さぁ…。買い出しから帰ってきた後は見てないな。

ロッド様は素晴らしく聡明で頼れるお方だから、きっと静かな場所で一人考え事をされているに違いない。」



ラントがそう言い切ったところで、着替えを終えた私はロッド様がかけてくれた騎士団の青い上着を畳んで手に持った。


そして、永遠とロッド様の生い立ちから順に語り始めようとするラントを置いて、静かにその場を離れる。



…ロッド様にこの上着を返さなくちゃ。

どこにいるんだろう…?



私は、森の中を見回しながら進んでいく。


すると、木漏れ日が差し込む道の奥に、開けた草原があるのが見えた。



…!



初めて城から出て見たノクトラームの自然に私は胸が踊る。


好奇心と興奮にかられ、私の足はまっすぐに草原へと向かって行った。



「わぁ……!」



森を抜けた場所に広がっていたのは、木々に囲まれた小さな草原だった。

春らしい花々が咲き乱れ、風に吹かれて蝶々が戯れているようだ。



…素敵な花園…。


城の部屋から見える森に、こんな場所があったなんて…。


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