反逆の騎士長様


私が目をぱちぱちとさせていると、ロッド様が緊張した顔で私に尋ねた。



「…気に入らなかったか?」



「いえ!とても素敵です…!」



すると、ロッド様は照れたように言葉を続ける。



「悪いな。俺を地下牢から出してくれた姫さんにちゃんと礼をしようと思ったんだが、女性が喜ぶものが分からないんだ。

花なら、いいかと思って…。」



これを、ロッド様が…?


まさか、今までいなかったのは、これを一人で作っていたから…?



私はそれを聞いて、つい吹き出してしまった


くすくす笑う私に、ロッド様は動揺して私を見る。



「姫さん…?」



「す、すみません…。

まさか、ロッド様が花冠を作れるなんて、意外で…!」



すると、ロッド様は微かに耳を赤くしながら私に言った。



「花冠の作り方を、城下町の子どもたちに教えてもらったんだ。

…俺が作ってやったら、あいつらはすごく喜んだんだが…やっぱり姫さんと子どもを一緒にしちゃあ悪いよな。」



「いえ、そんなことはないです!

…とても可愛いです…。」



“ロッド様が”とは言えず、私は花冠を胸に抱きしめて彼を見上げた。


先ほどまで、操られた騎士たちを相手に真剣な表情で戦っていた人と同一人物とは思えない。


ほっ、としたような顔をしたロッド様に、私は花冠を見つめながら言った。



「これは、シロツメクサですね。」



「あぁ。…“幸運”や、“約束”、といった花言葉があると子どもたちから聞いた。

この花冠には魔法がかけてあるから、俺の魔力が消えるまでは、枯れたりしない。」



へぇ…!すごい…!



「ありがとうございます…!

大切にします…!」



私がそう言った瞬間、ロッド様は、すっ、と私の前に跪いた。



…!



真剣な瞳で私を見つめる彼から、目が離せない。



「…姫さん。」



低く艶のある声が耳に届いた。


綺麗な碧眼に、私の姿が映る。



「…城でも言ったが、もう一度言う。

俺は、姫さんの力を借りる代わりに、命懸けであんたを王子の元に連れて行くと誓う。」







ロッド様は、凛とした口調で言葉を続けた。



「だからいつか、この花冠が本物のティアラになって、姫さんがノクトラームの正式な姫になる日まで、俺の隣に居てくれないか。

…俺には、姫さんが必要なんだ。」



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