反逆の騎士長様



ザァ…!と花吹雪が舞う。


私は、ロッド様の前にしゃがみ込んで目線を合わせた。


そして、にこりと笑って彼に答える。



「えぇ、もちろん。

今さら“故郷に帰る”なんて言いません。ずっと、貴方について行きます…!」



ロッド様は、目を見開いた。


そして次の瞬間、見たこともない優しい瞳をして私を見つめ、ふっ、と微かに笑う。


その表情は、ジャナル大臣の言ったような
“凶暴な二面性を持つ獣”には到底思えなかった。



「ロッド様は、そんなに優しく笑う方なんですね。」



「え……?」



彼に笑い返しながらそう言った私の言葉に、ロッド様の動きが止まった。


ロッド様は驚いたように、はっ、としている



…?



すると、ロッド様はまばたきをしながら小さく私に尋ねた。



「今…俺は笑っていたのか?」



え…?



私は、真剣な瞳でそう言ったロッド様に尋ね返す。



「はい、優しげに微笑んでました。

…ご自分で気づいてないのですか?」



「あぁ…。…俺は笑うのが苦手なんだ。」



確かに、ロッド様はあまり笑う方ではない、というのは会った時から思っていた。


冷静沈着で、表情をあまり崩さない。



…今のは、無意識ってこと?


じゃあ、貴重なものを見られたってことなんだ?



ロッド様は、小さく呼吸をして立ち上がりながら私に言った。



「姫さんはすごいな。呪いを浄化する以外にも、人の心を癒す力があるようだ。

…姫さんといると、気が緩む。」



…!



ロッド様はそう呟くと、ゆっくりと私に背を向けて歩き出す。


私が、ロッド様を追いかけようと立ち上がると、彼は少しだけ振り返って口を開いた。



「ん。おいで、姫さん。」



差し出される手。


私を見つめるその横顔は、とても綺麗で、目が離せなかった。



「はい…!」



私は彼の手をとった。


こうして、私と反逆者たちとの旅が始まったのです。



第1章*完

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