反逆の騎士長様
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「えっ!
ロッド様は、ヴェルに魔法を教わったんですか?」
四人で並んで樹海を進む中、私達はヴェルの語る過去の話を聞いていた。
私の言葉に、ロッド様は懐かしむように答える。
「あぁ。幼い頃、俺はよくここに来てヴェルに稽古をつけてもらっていたんだ。
言わば、ヴェルは俺の“師匠”みたいなもんだな。」
へぇ…!
そうなんだ!
それを聞いて、ラントもヴェルのことを尊敬するような眼差しで見つめていた。
すると、ヴェルは自慢げに髭を触りながら口を開く。
『ロッドには、攻撃魔法から治癒魔法まであらゆるものを教えたのぅ。
まぁ、中には実戦に使えない魔法もあるが』
“実戦に使えない魔法”?
私とラントが首を傾げると、ロッド様は苦笑して私達に言った。
「“突風で相手を吹き飛ばす魔法”のことだ。ヴェルと会った時に、ラントに向かってヴェルが使っていた魔法だよ。
あれは子どもでも使える初級魔法で、言ってみれば“ただの風”だからな。実戦で使っても相手に魔法の壁で防がれるか、一瞬猫騙しをするくらいにしかならない。」
そっか。
攻撃魔法としての威力が低いから、“実戦では使えない”んだ?
その時、ヴェルがラントの方をちらり、と、見ながら呟いた。
『まぁ、自身の打たれ強さを過信して、攻撃ばかりで防御を疎かにするような未熟者には使える魔法じゃろうな。』
「それ俺のことだよな、ジイさん…!」
ラントが、じろり、とヴェルを睨んだところで、ロッド様は苦笑しながらラントに声をかける。
「そう殺気立つな、ラント。お前も、これから経験を積めば強くなれるさ。
風の魔法もどこかで使い道があるかもしれないから、後で教えてやる。」
「えっ!本当ですか!!嬉しいです…!」
ラントは、急に機嫌を直して笑顔になる。
…ロッド様が直々に魔法の指導をしてくれるなんて、ラントにとっては最上の幸福なんだろうな。