反逆の騎士長様
私とロッド様が起き上がって視線を向けるとジャナル大臣は不敵に微笑んでヴェルに答えた。
「少し魔法をかけさせてもらっただけですよ
“反逆者達に制裁を与えるための魔法”だったのですが…見境なく友や姫様に攻撃する様子では、凶暴化しすぎてしまったようですね。」
っ!
ロッド様とラントを殺すため、ガルガルを利用したってこと…?
まさか、ジャナル大臣がこの樹海に通っていた理由は、この罠を仕掛けるためだったの…?!
ロッド様は、険しい顔をしてジャナル大臣らを見つめている。
その時、ラントが、ギロリ、と彼らを睨んで口を開いた。
「相変わらず汚ない手しか使わねーな、お前らは…!
ガルガルにかけた魔法を解かねーって言うなら、本気で叩っ斬るぞ!」
すると、ジャナル大臣は目を細めてラントに答える。
「…では、“交換条件”といたしましょうか」
!
「もし、姫様が大人しく城に戻ってくださるのなら、すぐにでも魔法を解きましょう。いずれ捕まえるにせよ、あなた方のことも見逃して差し上げます。
…どうです?悪い話ではないでしょう。」
ジャナル大臣の言葉に、その場にいた全員が目を見開いた。
私が、この取り引きの“鍵”ってわけ…?
どくん…!
心臓が鈍く音を立てる。
…たぶん、私が城に戻れば、私は一生外に出してもらえない。
最上階の部屋に再び軟禁されるか…最悪の場合、地下牢行きだ。
私が、ぎゅっ…と手のひらを握りしめた瞬間
ロッド様の声が辺りに響いた。
「断る。」
!
ロッド様が私を抱きしめたまま、ぐいっ、と肩を引き寄せた。
さらり、と彼の漆黒の髪が私の頬に触れる。
首元に顔を埋めると、低く艶のある声がすぐ側で聞こえた。
「そんな条件、願い下げだ。
あいにく、姫さんを手放す気は無いんでな」