反逆の騎士長様
心の中で、何か不確かな感情が揺らめいた気がしたが、その場に響き渡るガルガルの声が、私を現実へと引き戻した。
『ぐわぁぁあっ!!』
っ!
ガルガルが、太く鋭い枝をこちらに向かって振り下ろす。
ロッド様とヴェルは、枝を上手く躱して枝同士を絡ませるように誘導していく。
…今だ…っ!
私は、その隙にガルガルの幹へと駆け寄り、勢いよくタン!と手を付いた。
その瞬間、ガルガルの叫び声が一瞬止まる。
パァァッ!
辺りに、浄化の光が広がった。
!
いける…!
ロッド様とヴェルは、微かに顔を緩ませて私を見た。
その時、ガキン!という剣の交わる音が耳に届いた。
私の背後でラントとクロウが交戦を始める。
「…くっ…!」
ラントは、クロウの攻撃を剣で受け止めながら、私からクロウを遠ざけようとしているようだ。
浄化をしながら、さっ、と背後に視線を向けると、ラントとクロウの剣の腕はほぼ互角だった。
ラントはクロウの攻撃の合間を見計らって、剣や蹴りで応戦している。
クロウは表情一つ変えずに、ひたすら目の前のラントを始末しようとしているようだ。
斬撃の合間に、ラントがクロウに向かって口を開く。
「お前、何でジャナルなんかの言いなりになってんだよ…!
あんな奴の下につかなくたって、お前の腕ならノクトラームの騎士団に入れるだろ!」
クロウはラントの言葉に答えようともせず、ただ、薔薇色の瞳を微かに細めて剣を振り続ける。
その時、ガルガルが地面をなぎ払うように枝を振った。
ロッド様とヴェルが、私の周りに魔法で光の壁を作り出す。
パァン!
光の壁に弾かれた枝は、まっすぐラント達の方へと飛ばされた。
ラントとクロウが、ガルガルの腕を避けて空へと飛び上がる。
と、次の瞬間だった。
一瞬の隙をついたラントが、クロウを地面に向かって蹴り落とした。
ドッ!!
鈍い音が聞こえ、クロウの体が地面に叩きつけられる。
「…ぐ…っ!」
!
私が、はっ、とした、その時
ラントは、追い打ちをかけるようにクロウに向かって剣を構えた。
「…悪いな、クロウ!
このままケリをつけさせてもらうぜ…!」
「!」
クロウが目を見開き、ラントがそう言い放った瞬間。
ラントの剣が、クロウの体を斬り裂いた。