反逆の騎士長様



!!


ぞくり、と体が震えた。


身震いするほどの静寂が辺りを包む。


クロウは、そのまま地面に倒れこんで動かない。



…い、命を奪ったの…?



私が動揺してラントを見つめていると、視線に気づいたラントは、荒い呼吸をしながら私に言った。



「安心しろ、気絶させただけだ。

ただ、深手を負わせたから当分剣は振れないだろうな。」



…!



殺したわけじゃないんだ…。



私は、微かに息を吐いた。


ガルガルの動きも落ち着き始める。


ロッド様とヴェルは、動き回りながら呪いの浄化の様子を見つめていた。


背後の喧騒が止んだところで、私はガルガルの幹に触れる手に力を込める。



パァァッ!



温かな光が広がった。



…もう少し…

あと、もう少しですべての呪いが浄化出来る…!



私が、最後の力を込めた、次の瞬間だった。



…どくん!



感じたこともない邪悪な魔力が辺りに立ち込めた。



?!



私が、はっ!として顔を上げたその時

ゆらり、と地面に倒れていたクロウが起き上がる。







その場にいた全員が目を見開いた瞬間。

クロウが、ラントに向かって一気に距離を縮めた。


不意を突かれたラントは、咄嗟に反撃することが出来ない。



「ラント!避けろ!」



ロッド様の声が響くと同時に、クロウの剣がラントを襲った。



ザシュッ!!



「っ!!」



ラントは紙一重で避けるが、腕を斬られて剣を落とす。


ラントの顔が、苦痛に歪んだ。


私は、全身が凍りついたように動かなくなる



と、その時、クロウの魔力に刺激されたガルガルが、ロッド様とヴェルの体を枝で絡め取った。



「!」


『っ、しまった!』



二人は、ギリギリと体を締め付けられる。







私は、全身の体温が一気に下がった。


状況が一変したことに動揺した私は、必死で心を落ち着かせようとする。


浄化に全力を込める中、背後からラントの声が聞こえた。



「クロウ…、お前、どうして…?

俺はさっき、お前の体を斬り裂いて意識を飛ばしたはずなのに…!」



浄化をしつつクロウに目をやると、彼の体は確かに傷だらけで、ラントに斬られた傷からは血が流れている。


しかし、クロウは表情一つ変えずに、信じられない言葉を言い放った。



「…どうして立てるか、って?

俺は、決して“死なない”からさ。俺を殺せるのは、ジャナル様だけだ。」






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