反逆の騎士長様
…カラン…!
ラントが、力が抜けたように剣を地面に落とした。
それと同時に、ロッド様も魔力を消し、ふっ、と地面に倒れこむ。
「ロッド様!!」
私は、急いでロッド様の元に駆け寄った。
彼は荒い呼吸をしながら、かろうじて意識を保っている。
彼を抱き寄せ力を込めると、耳元でロッド様の掠れた声が聞こえた。
「…姫さん…よくやった。
ガルガルの呪いを解いてくれて、ありがとな…。」
!
私は、はっ!としてロッド様に答える。
「それは、皆さんが私を守ってくれたお陰です!そんなことを言っている場合じゃないですよ!
ロッド様、大丈夫ですか!しっかりしてください…!」
すると、ロッド様は苦しそうに呼吸をして小さく呟いた。
「…っ……少し、無茶をしすぎた。
…っとに…この体は使い物にならない……」
どこか悔しそうな声が聞こえた瞬間、私の腕の中でロッド様の意識が途絶えた感触がした。
!
私は、ばっ!と体を離してロッド様の顔を覗き込む。
漆黒の髪の間から見えるはずの碧眼は、閉じられていた。
「ロッド様?ロッド様!起きてください!」
私は声をかけながら浄化をし続けるが、首元の痣が薄くなっても、ロッド様が目覚める気配はない。
するとその時、ヴェルが私たちの元へと駆け寄って、ロッド様の額に手を当てた。
ポゥ…!
淡い光が、ロッド様を包んでいく。
私がヴェルを見つめると、ヴェルは落ち着いた声で私に言った。
「セーヌ、大丈夫じゃ。ロッドは気を失っているだけで、死んではおらん。
とりあえず、わしのツリーハウスへ行こう。今夜は寝床を貸してやる。」
震える私の指をゆっくり握ったヴェルは、私を落ち着かせるように優しく笑った。
その瞬間、私は体の力が抜ける。
…よかった…。
ロッド様は無事なんだ…。
ヴェルは、魔法でロッド様の体を宙に浮かべてツリーハウスへと運び込んだ。
そして、静まり返った樹海で、ラントは一人険しい顔をしていたのであった。