反逆の騎士長様
すると、ラントは私の言葉に、ふぅ、と息を吐いて、ドサ、と太い根っこに座り込んだ。
「…よかった……。」
小さく呟かれたその声は、どこか震えているように聞こえた。
私は、ラントの隣に座って彼に声をかける。
「ラント。腕の傷は大丈夫なの?」
「あぁ。ジイさんに治してもらったんだ。
完全に傷が消えたわけじゃねーが、もう戦える。」
そうなんだ…。
本人の口から聞けたことで、私は、ほっ、と胸をなでおろした。
私は、ラントに向かって言葉を続ける。
「怖かった…。
ラント、本当に殺されちゃうかと思った…」
「あぁ、俺も死ぬかと思った。
ロッド様が助けてくれなかったら…終わってたな。」
ラントは、どこか元気がない。
彼らしくない、思いつめたような表情に、私は少し躊躇しながら口を開いた。
「ラント…大丈夫…?」
すると、ラントは少しの沈黙の後、小さく呟いた。
「……ごめん、セーヌ。」
「え…?」
突然のことに、私はつい戸惑いの声を上げた
ラントは、顔を俯かせながら言葉を続ける。
「ロッド様は俺を信頼してお前を俺に託したのに…、あの時、俺がもしやられてたら、きっとここにお前はいなかった。
ガルガルの呪いも、ロッド様の呪いも解けないまま、クロウに連れ去られてたかもしれない。」
…!
はっ、と目を見開くと、ラントは、ぐっ、と拳を握りしめて震える声で言った。
「…俺、油断したんだ。クロウを斬って、奴ともう決着をつけたつもりになってた。
俺の気が緩んだせいで…ロッド様に無理に魔法を使わせた。」
!
私はその言葉に、ラントの心を察した。
…ラントは、自分のせいでロッド様や私を危険にさらしたと思ってるんだ。
自分を責めて、無力感に苛立って、どうしようもなく後悔している。
私は、そんなラントの話を黙って聞いていた
そして、ラントがやりきれないように額に手を当てた時、彼の隣でゆっくりと口を開いた。
「…謝ることないよ。ラントは、傷を負ってまで私を守ってくれたじゃない。
クロウが“不死身”だってことは、誰にも想像できなかった。気が緩んで当然だよ。」
「……。」
ラントは、檸檬色の瞳を微かに揺らめかせ、私の言葉を聞いていた。
「ロッド様が魔法を使って呪いに傷ついたら、必ず私が浄化するから。絶対、ロッド様を死なせたりしないから。
…いつか、ロッド様の呪いが全て解けた時、きっとラントは今よりずっと強くなってるよ。」
「!」