反逆の騎士長様
今…なんて?
ま…
まさか、この人………
私の頭に、ある予感がよぎった
その時だった。
背後から、走ってくるような足音が聞こえ、次の瞬間ぐいっ!と肩を引かれた。
っ!
思わず体重を後ろにかけると、ぼすん、と力強い体が私を支える。
見慣れた外套が視界に入った。
「俺の連れに何の用だ」
低く艶のある声が耳に届く。
顔を上げて後ろを見ると、眉を寄せたロッド様の顔が見えた。
どきん…!
私を庇う力強い腕の感触に、ふいに胸が音を立てる。
と、その時
ロッド様が相手の顔を見て目を見開いた。
そして数秒後、ロッド様は無意識にある名前を呟く。
「……アルトラ…?」
!
私が、はっ!とした瞬間、アルがロッド様に向かってにこりと笑いながら口を開いた。
「久しぶりだな、ロッド。
再開の第一声で威嚇するなんて、僕だと気付かなかったのか?」
!!
ロッド様はアルの言葉を聞いて、すっ、と私から離れる。
そして、ふっ、と表情を和らげて口を開いた。
「姫さんは危なっかしい所があるから、男に絡まれてると思った瞬間体が動いたんだ。
まさか、俺が紹介する前に会ってるなんて思いもしなかったからな。」
私は、頭上で繰り広げられる会話に、頭によぎった予感が確信に変わる。
そして私は、アルに向かって尋ねた。
「…貴方が、アルトラ王子…?」
するとアルは、ふっ、と微笑んで私に答える。
「あぁ、そうだよ。
…改めましてよろしく、セーヌさん。」
!
どきり、と胸が鳴った。
まさか、本当にアルが王子様だったなんて…!
どうりで、境遇がそっくりなはずだ。
お互い、ジャナルに利用されて婚約を結んだ同士だったんだもの。
私は、はっ!としてアルに言った。
「ご、ごめんなさい、馴れ馴れしくアルなんて呼んで…」
「大丈夫だよ。仮とはいえ、セーヌさんは僕の“妻”なんだから。
変に気を使わないで、今はただの旅人同士として付き合っていこう。」
っ!
“妻”という単語に、つい反応してしまう。
…そっか。
私は、この人に嫁いできたんだ。
その時、私たちの元へ遠くから走り寄ってくるラントの姿が見えた。
そして、ラントはアルを見た瞬間に大きく目を見開く。
「アルトラ王子?!何でここに!」