反逆の騎士長様



「「温泉?」」



私とラントの声が重なった。


すると、アルは船の方を視線で指しながら言葉を続ける。



「あぁ。港に着いた時に、偶然出会ったおばあさんに聞いたんだよ。

“私の経営してる温泉は、呪いの魔法に効くお湯なんです”って。」



へぇ…、すごい効能だな。


呪いの魔法に効くなんて…!



ロッド様は、「ノクトラームにそんな湯が湧いてる所があったなんて、初耳だな。」と興味深そうに呟く。


ラントは、ロッド様に向かって声をかける。



「温泉、いいじゃないですか!たまには、別の方法で浄化を試みたらどうです?

湯治で、さらに痣が薄くなるかもしれませんよ?」







確かに、私の力で浄化出来ない呪いを和らげることが出来るかもしれない…!


しかも、ロッド様とラントは私が夜寝ている間にも交代で敵襲に備えていた。

ずっと気を張ったままで疲れも溜まっているはずだ。



温泉に入れるのはいい機会かもしれない…!



すると、ロッド様は眉を寄せてラントに答えた。



「…俺も、ずっと姫さんに頼りっぱなしなのも悪いと思っていたが…。

国に追われて、いつジャナル達が襲ってくるか分からない状態で宿をとるのは民を危険に巻き込みかねない。」



…!



そっか…。



今まで、私達はずっと野宿生活をしてきたから考えなかったけど、宿に泊まるとなれば話は別だ。


宿が襲われたら何の関係もない一般の人を戦いに巻き込むことになるかもしれない。



すると、腕を組んだロッド様にアルが、にこりと笑いながら言った。



「大丈夫。その宿は今、“閉鎖状態”だから、きっと僕らの貸し切りだよ。」



え?



「それって、どういうことですか?」



私がそう尋ねると、アルは私を見つめて言葉を続けた。



「実は今、山では“白雪病の毒リンゴ”の木が生えていてね。

おばあさんの話では、国の回収が終わるまで一般の人は立ち入りが制限されてるらしいんだ。」






“白雪病の毒リンゴ”?


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