反逆の騎士長様


思わず、声が掠れてしまう。


身動きが取れずに、私はロッド様と見つめ合う。


緊張のあまり息が出来ない。



「…姫さん。」


「は、はい…?」



ロッド様の声が私の心を直接震わせるように耳に響く。


ロッド様の声以外、何も聞こえない。

彼から、視線を逸らせない。



私がロッド様の服を掴んだ、その時

ロッド様は低く言葉を続けた。



「…目を閉じて、くれないか。」



───!



私は、はっ、とした。


その一言で、私の中の何かが変わる。



「…“キス”…ということですか…?」



「………あぁ。」



少しの沈黙の後、彼は静かに答えた。


彼の瞳に一瞬、迷いとそれをかき消そうとする感情が見えたが、すぐに元の碧眼に戻る。


怖いくらいの静けさが部屋を包んだ。


私は、すぅ…、と呼吸をする。



…ひた…。



「!」



目の前の彼の頬に手を添えると、彼はぴくり、と肩を震わせた。


先ほどとは違う緊張が私の体をこわばらせる。


お互い、一言も口にしない。


彼が微かに眉を寄せて距離を縮めようとしたその時。

私は彼の瞳をまっすぐ見つめながら口を開いた。



「…貴方は、誰?」



「!!」



次の瞬間、ばっ!と彼が私から離れた。


ひどく驚いた様子で私を見る。


そんな彼に、私は目を逸らさずに言葉を続けた。



「…貴方は、ロッド様じゃない。

ロッド様はどこ?」



「…な、何を言ってるんだ姫さん。

俺は本物のロッドだ。」



「違う!」



彼が目を見開いた時、私は強く言い放った。



「キスで浄化はしないって約束したの。ロッド様は約束を破るような人じゃない。

私に対していつも誠実で、強いロッド様は、もし本当に辛くても一人で我慢するような人なの。」



彼の碧い瞳が揺らめいた瞬間、私はぐっ、と手のひらを握りしめて言った。



「私は、私が見てきたロッド様を信じてる。

貴方がロッド様なわけない…!」



と、私の声が部屋に響いた

その時だった。



…シュン…!



目の前の彼の髪が漆黒から銀髪に変わった。

瞳の色も、海のような碧色から深紅のバラ色へと変化する。







その姿に、私は息を呑んだ。



「クロウ……?!」



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