反逆の騎士長様


**



ピチチチ……



「……ん……。」



小鳥のさえずりに目を開けると、宿屋の窓から朝日が差し込んでいるのが見えた。


風に海の香りが混じっているのを感じた時、私は自分が部屋の布団で寝ていることに気がついた。



…あれ?


私…まさか昨日倒れてからずっとここで寝ていたの…?



むくり、と起き上がると、隣にはアルの荷物のみがあり、アルの姿は無かった。

布団を引いた形跡もない。



…?


アル…?



と、その時

トントン、と部屋の襖を叩く音がした。



「セーヌさん、起きてる?」






アルの声だ。



「は、はい…!起きてます…!」



反射的に答えると、ゆっくりと部屋の襖が開かれた。

そして、その向こうから琥珀色の髪の毛の青年が現れる。



「おはよう、セーヌさん。

体調は大丈夫?」



アルは、優しく微笑んで私に声をかけた。



「大丈夫です…!ご迷惑をおかけしました」



私の言葉に、部屋に入ってきて畳に腰を下ろしたアルは、ほっ、とした様子で呼吸をした。


そして、私の方を見ながら言葉を続ける。



「よかった…。セーヌさん、昨日僕の目の前で倒れてから、ずっと眠り続けてたんだ。

初めてセーヌさんの意識が戻ったのを見れて安心したよ。」



…!



私、やっぱり白雪病にかかっていたんだ。



私は、アルに向かって尋ねる。



「アルは怪我とかしてない…?

ロッド様やラントも、相当無理をしたみたいだったけど…。」



「あぁ。僕とラントはほぼ無傷だよ。

ロッドも呪いが落ち着いて、今は回復したみたいだ。」






よかった……。



私は、ほっ、として体の力が抜けた。


その時、ふと頭の中に靄のかかったような曖昧な記憶があることに気づく。



…私…確か昨日、誰かにキスで白雪病を解いてもらった。



私は、はっ、として口を開く。



「…ねぇ、アル。」


「ん?」



こちらを向いたアルに、私は尋ねる。



「私の白雪病を解いたのは…アルだよね?」



「…!」



アルは、微かに眉を動かした。

そして少しの沈黙の後、小さく微笑む。


アルは、何も言わなかった。


そして、微かにまつ毛を伏せて私から視線を逸らすと、すっ、と立ち上がった。



「…セーヌさん。」


「?はい。」



私が答えると、アルは視線をこちらに向けないまま口を開いた。



「…僕は一つ、セーヌさんに謝らなきゃいけないことがあるんだ。」



“謝らなきゃいけないこと”…?


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