反逆の騎士長様





や、やっぱり、ロッド様から見て私は相当
常識外れの姫なんだ…。


まさか、引かれてる…?



と、その時。

私は、はっ!としてロッド様に尋ねた。



「ど、どうして私がクロウに灰皿で襲いかかったことを知っているんですか?

あの時、ロッド様達は閉じ込められていたはずなのに…」



すると、ロッド様は「あぁ…」、と答える。



「アルトラの魔法で姫さんの部屋の様子を鏡越しに見ていたんだよ。

助けに行けない分、姫さんのことが心配で」



…!


そんなことが出来るんだ…



あの時の出来事を、全て見られていたってこと?



“そんなので俺を倒せるとでも思ったのか”



どくん…!



頭に響くのは低く冷たい声。


唇にあの感触が蘇る。



…クロウとのキスも…見られていた…?



急に、体温が下がった気がした。

指先から冷たくなっていく。



なぜだか、ロッド様と目が合わせられない。



「…姫さん?」



異変に気付いたロッド様が、小さく私を呼ぶ。


ザァ…、と風が辺りを吹き抜けた。



「……」



ロッド様は、黙って私を見つめる。


私が何を考えているのか、心を見透かされているようだ。


私は、無理やり笑顔を作って口を開く。



「…き、気にしてませんよ、あんな事故みたいなキス。

白雪病はもう解けたし、気持ちのないキスなんて“事務作業”だと思えばいいんですもんね!」



…あの時溢れた涙は、無意識だった。


ロッド様の顔がすぐ頭に浮かんで、なぜか心が苦しくなった。


アルとラントは、どう思っただろう。


あんな、簡単に腕を掴まれて…抵抗も出来なくて。



…ロッド様には、見られたくなかった。


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