反逆の騎士長様
そこには、今までの手紙に綴られていたような長文はなかった。
ただ一行だけ、綴られている。
“月の夜 十二時 ヤドリギの下”
はっ、とした。
これは、どういう意味…?
“月の夜”、時間は“十二時”
場所は“ヤドリギの下”
…二人の待ち合わせ…
…いや、これは密会…?
その時、私は手紙の終わりの文に目を奪われた。
思わず、呼吸を忘れる。
“一晩だけお待ちしております クロウ様”
!
“クロウ”…?
その時、私の中にあったものが全て繋がった気がした。
まさか、あの写真の青年は………!
私は、思わず部屋を飛び出した。
パタパタと廊下を走り、隣のラントの部屋へと駆け込む。
「ラント!聞いて!」
「ぎゃあっ!!!!!」
私の訪問に、ラントは座っていたソファから転げ落ちた。
「な、何だよお前かよ!ノックぐらいしろ、マナーだろ!」と叫ぶラントに近づき、私は口を開く。
「そんなことより、気づいたことがあるの!
私の部屋に来て…!」
「何だよ。
一人が怖いからって俺はお前の面倒なんか見ないぞ。」
「違うの!
怖いからラントを呼びに来たんじゃなくて……」
と、私が答えた
その時だった。
ぴくり、とラントが肩を揺らした。
険しい顔をして床から立ち上がったラントに私は戸惑う。
すると、ラントが部屋の外を見つめながら呟いた。
「…魔力を感じる。」
え…?
ラントは、剣を手に私の前へと進んだ。
「ラント…?どうしたの?」
「ロッド団長とアルトラ王子以外の魔力が近づいて来てる。」
!
目を見開く私に、ラントは小声で言った。
「敵だったら、セーヌは俺から離れるなよ。
…幽霊だったら、俺はお前を置いて逃げる」
「い、嫌なこと言わないでよ。」
ラントは口ではそう言いつつも、私を庇うように気を回しながら部屋の扉へと向かった。
どくん、どくん、と心臓が音を立てる。
…敵がここまで追ってきたのなら、非常に危険だ。
ここには、ロッド様もアルもいない。
幽霊だったら、別の意味で危険だけど…
「行くぞ、セーヌ…!」
ラントが、扉のノブに手をかけながら言った。
私は、ごくり、と喉を鳴らして頷く。
次の瞬間、私とラントは一気に扉を開けて廊下へと飛び出した。
「「!!」」
そして、廊下にいた人物に声を失う。