見えないなら繋いで
そのまま店を出て近くのスポットワールドへ向かう。
ゲームセンターやボーリング、スポーツゲームができる高校生に人気の遊び場だ。

「真壁くんはよく来る?」
「あんまり。身体動かすのそんなに好きじゃない」
「あはは、ぽいね。でも今日は良かったの?」
「まあ、久しぶりだったから」

あんまり好きじゃないとこに連れてきてくれたのは私のためかな。
なんて、私調子のってるな。

「で、何がいいの」
「まずボーリング!」
「バスケは」
「とりあえずボーリングで準備運動してから」
「…神月さん、ほんと体育会系だよね」

そんなこと言いつつ、結局両方とも付き合ってくれる真壁くんはやっぱり優しくて。
今日一日だけでも今までよりずっと好きになってしまった。

真壁くんは、楽しんでくれたのかな。

「あー楽しかった!」
「…疲れた」
「へへ、ありがとうね」
「もうしばらく来ない」
「楽しいのにー。…でも、ほんとに今日は楽しかった」

陽の傾いた道を並んで歩く。
すごく充実した一日だった。

次はいつ会えるのかな。

「真壁くん、来週の登校日は学校くる?」
「いや、部屋探しとかするから、しばらく行けない」
「家出るんだ」
「うん、通えないこともないけど。大学から近いとこ」
「そっか…じゃあ忙しくなるね」
「そうなるね」

そっか。寂しいな。
でも、新生活の準備をしないといけないのは私も同じだから。頑張らないと。

「また、連絡していい?」
「うん」

そのまま駅に着いてしまった。
真壁くんとは反対方向のホームだ。

「今日はありがとう。すごく楽しかったよ」
「それはよかった」

真壁くんは楽しかった?

「…じゃあ、またね」
「うん」

なんて、聞けないや。

笑顔で手を振って、そのまま別れてホームへ向かった。

それから、卒業式まで真壁くんとは会えなかった。

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