【B】眠らない街で愛を囁いて
プロローグ
叶夢【かなめ】。
それは私が生まれた時に今は亡き大婆【おおばば】さまが、
啓示を受けて名付けられた名前だという。
だけど……ずっと私は、その名前に抵抗があった。
叶う夢。
もっと呼びやすい、普通の平凡な名前で良かったのに……。
だけど……そんな名前が、
いつも私の未来を示してくれた。
願い続ければ示し続ければ夢は必ず叶うのだと、
私の未来を照らし続けてくれた。
田舎の檀家の少ないお寺の一人娘が、
東京に出ると言う夢も叶えられた。
『叶夢、高校を卒業した年、お前は運命の人に出逢うだろう。
その手に未来を掴み取れ』
そう言って私が小学校一年生の時に、息を引き取ったのは祖父。
今までずっと考えないでいた最期の言葉が、
現実に湧き上がってきた年、私は新しい一歩を踏み出した。
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