【B】眠らない街で愛を囁いて
3.冷たい都会【まち】-叶夢-
浜松のサービスエリアで拾った不思議な青年。
その人をおろして、近くのコンビニの駐車場で時間を潰してから、
アパートの鍵を受け取って荷物を運び入れると、
ワンルームマンションの荷物を少し整えて、
僅かにあいた隙間に布団を敷いて眠りにつく。
明け方、早朝再び、車に乗り込んで実家までの道程を走り続けた。
そして再び、その日の夜に夜行バスに乗り込んで
東京のアパートへとUターンした。
あの人が忘れられた、浜松のサービスエリアでは15分ほどの停止時間、
慌ただしくトイレ休憩に降りて、すぐにバスへと戻りながら、
出逢った青年のことを思い返す。
……あの人、無事に荷物返してもらったのかな?……。
優しそうな印象の男の人だった。
それにあの人を迎えに来てた車、
何処かの外国の車っぽかった。
お金持ちなのかなー。
ふと、そんな想像が脳裏を掠めた。
早朝からアパートに到着するとそのまま布団へ倒れこんで、
起きてから実家へと無事に東京に戻ってきたことを伝えた。
「叶夢ちゃん、最初が肝心よ。
お世話になるんだから、大家さんとか同じ階の人たちにちゃんと引っ越しの御挨拶しておきなさいよ。
タオルでも洗剤でもいいんだから、何か持っていくのよ」
っと引っ越しの挨拶をするようにと助言してきたお母さん。