【B】眠らない街で愛を囁いて
5.バイト先は恋するビル-叶夢-


新しい配属先のコンビニ店舗に向かう初日。
約束の時間に、指定された場所に向かって感嘆しか出ない。


今日からの私の職場は、
B.C. square TOKYOという名前の付いたビルの二階にあるコンビニ。



何処までも高いビルを地上から眺めて、
空の太陽の眩しさと、煌めくビルの美しさに目を細めながら
気合を入れる。





さっ、頑張ろう。




小さく肩を上下させて、自分を奮い立たせると覚悟を決めたように
私はビルの中へと入っていった。




ビルの中に一歩踏み入れると、高級そうなエレベータからスーツケースをころころと転がす、
ビジネスマンらしき人たちが忙しなく行き交っていた。



そして作業着を着たおじさんが、エントランスで掃き掃除をしていた。




足元の床は、全てが映り込んでしまうくらいピカピカでゴミ一つ落ちてないのに。
そんな疑問を感じながら、私は二階へと続くエスカレーターの方へと歩みを進める。



「おはようございます」

「はいっ、おはようございます。
 失礼ですか、お嬢さん、どちらにお出かけですか?」



管理人さんらしきその人は、
和らかな口調で私に問いかける。



「二階のコンビニ店で今日からお世話になります」

「あぁ、そうでしたか……呼び止めましてすいません。
 当ビルの管理人を務めます、田中と申します。

 お嬢さんも何か困ったことがあれば、
 地下五階へとお越しください。

 お仕事頑張ってくださいね」


田中さんと名乗られたその人は、ゆっくりと私にお辞儀をすると再び仕事へと戻っていく。

田中さんの仕事姿を背に感じながら、エスカレーターに乗り込んで私は二階の職場へと足を踏み入れた。
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