【B】眠らない街で愛を囁いて
6.探していた少女-千翔-
出逢ったその日から、気になって仕方がない少女。
困っていたところを助けてくれたから?
狭間の世界から救い出してくれたから?
だからこんなに気になるのだろうか?
少女の名は『かなめ』。
彼女は、この四月から何処かの大学へ入学するのだろうか?
彼女が運転していた車には、べったりと貼られた真新しい初心者マーク。
この時期に取得したと言うことは、彼女は先月、高校を卒業したばかりのようにも推測できる。
そんな僅かな手がかりを元にバカだと思う自分を抑えながら、
『かなめ』を探し続ける、自分でもどうしようもない俺自身がそこにいた。
学生の身でIT関連のビジネスを手掛ける経営者。
学業もビジネスも手を抜くことは許されない。
それぞれの時間はびっちりと効率よく努めて、
僅かな隙間を見つけては、『かなめ』を探してあてもなく街の中を放浪する。
『かなめ』と別れたあのインターチェンジに何度も足を運んでは、
その周辺のマンションを手掛かりに、ふらふらと歩いていく。
そんな日々でも、困った俺の体質はすぐに狭間の世界へと引き釣りこむ。
今日も交差点で、母親を探している子供に『おにいちゃん、いっしょにさがして』っと
服を掴まれて体が動かなくなった。
その子供はやっぱりと思うのだが、
俺など視えていないように、道路の方へと何かを追いかける様に飛び出していく。
そしてそれに引き寄せられるように踏み出してしまった俺に、
けたたましいクラクションが浴びせられて『死にたいのかっ!!』っと言う運転手の暴言と共に現実へと引き戻された。