【B】眠らない街で愛を囁いて
こんな生活をしていては何時かは、狭間の亡者に殺されてしまうのではないかと本気で恐怖を考えてしまう。
そんな状況を打破したくて、いろんな神社やお寺へとお参りにも出掛けた。
有名なお札があると厄除けに受けてきては身に着けているものの、
この現状は変わることはない。
不幸中の幸いはお札の効力が発揮されているのか、
まだ事故には繋がっていないと言う、その現実がそこにあるだけだった。
交差点で呆然と立ち尽くして、空を見上げる俺。
深呼吸を吐き出して、周囲へと意識を向ける。
よく見ると交差点のガードレールの足元には、
誰かが供えたであろう花が残されていた。
さっきの子供はこの場所で事故で亡くなってしまったのだと状況から推測することができた。
こうやって、現実と狭間の世界を行き来し続ける俺自身。
日々の日常に影響がないと問われれば、答えはノーだ。
この体質がゆえに、先日のように予定外の出来事が起こることもしばしば。
だけど……彼女『かなめ』と共に過ごし続けた時間は、
俺にとってすごく穏やかで優しかった。
そんな優しさが……今はただ忘れられなくて、
彼女の存在を求め続ける様に、隙間隙間の時間を使って、広すぎる街の中をあてもなく彷徨う。
その日も宛もなく彷徨い続けて、B.C. square TOKYOへと戻ってきた。
時間は17時を少し回ったころ。
数多くあるオフィスからは、定時で帰宅する人々が足早にエレベーターから出ては家路につく。
「あぁ、お帰りなさい」
すでに管理人業務を終えた田中さんが私服姿で何処かのオフィスの社員たちに囲まれながら俺に向かって声をかける。
「ただいま」
当たり障りなく、その人に声をかける。