【B】眠らない街で愛を囁いて
7.突然現れた青年 -叶夢-
コンビニのバイトを始めて、1ヶ月が過ぎようとしていた4月の終わり。
大学生活にもようやく馴染み始めて、
最初はキツカッタ、バイトと学業の両立も何とか出来る術を見つけることが出来た。
そして迎えたゴールデンウィーク初日。
実家からは、ゴールデンウィークは帰ってくるんだろって、
期待のこもった電話がかかってきたけど、私は学生だけど社会人になったんだ。
休めるものなら休んで、故郷に帰りたかったっていったら嘘になるけど、
職場の店長からも『ゴールデンウィークはかきいれどきだからねー』っと、
そっと休まないように先手を打たれ、結果、普段の公休の人以外は普通に皆、出勤する形になった。
大型連休で上の階のオフィスは一部閉まってしまっても、
全ての会社が休みなわけじゃない。
それにこのB.C. square TOKYOは、フィットネスクラブにレストラン街、
旅行客などが利用するホテルが併設されてる。
オフィスが休みだからといって24時間眠ることがないビルなのだ。
その日、店長に頼まれて11時から20時までのシフトを入ることになった。
ちなみに職場で親しくなった、織笑も私と同じシフトを店長に頼まれたみたいだった。
手慣れたコンビで11時から次から次へと仕事をこなして、
本日最終のお弁当便の入荷の片づけが終わって、ほっとした頃には時計は17時を回ろうとしていた。
後3時間か……。
自分に言い聞かせるように心の中で呟いて、
仕事の続きをしようと事務所へと、スナック菓子の在庫が入ったケースを取りに戻る。
ゴンドラの前で品出しの作業を続けながら、
先導してくれる織笑の挨拶をオウム返しするように自らも声を発していた。
『レジ応援お願いします』
織笑の声が店内に響くと、私はすかさず作業の手を止めて、
目の前にいるお客様にお辞儀をして理をいれた後、カウンターへと急いだ。
織笑のレジの前で列をなしているお客様を、休止中の札をとって、レジに自身のバーコードをスキャンして責任者番号を登録すると
すかさず「2番目にお並びのお客様、隣のレジへどうぞ」っと誘導するべく声をかける。
その言葉を皮切りにするように、お客様の列は織笑のレジ列と私のレジ列へと別れて、
そのお客さんたちを義務的に、はかせるようにただ一心不乱にレジ業務をこなし続ける。
人と対峙するときは、相手の目をしっかり見て……って、
小さい時から教えられてきたけど、悪いけどそんな余裕なんて全くない。
あんまり人の目を凝視することにも抵抗があるし、
自分の心を守る様に、少し俯き加減でたんたんとレジ業務を続けていたそんな時、
「こんばんは」っと私に挨拶をしてくる声を聴覚がとらえた。
商品を登録する作業を少しスローにして、思い切って顔を少し上げてみる。
そこに飛び込んできたのは、浜松サービスエリアで拾った夜行バスの青年だった。