【B】眠らない街で愛を囁いて
18.厄介な異父妹 -千翔-
「暁兄……叶夢は?」
叶夢が自宅でおそわれたあの日から、
一週間が過ぎても彼女は意識を戻すことがなかった。
「バイタルとしては何時目覚めてもおかしくないよ。
体的に異常をきたしているわけじゃない」
「そうなんだ……」
暁兄はそう言うけれど、一向に目覚める気配がない叶夢を見ていると、
もっと早く立ち回っていればっと自分を責めずにはいられなかった。
海の日、俺はオフィスでの仕事を終えて、
いつものように叶夢の働く職場へと姿を見せた。
その場所に居たのは、馬上貴江。
俺の母親が再婚相手との間に誕生した異父妹。
一度は馬上の籍へと養子に迎えられたものの、
今の俺の苗字が泉谷という母の旧姓になったのは、この妹が原因だった。