【B】眠らない街で愛を囁いて
まだ帰っていないのかもしれない。
近所まで出かけているのかもしれない。
そんな風に思い込みたかった俺は不安になっていく心を必死に気付かないようにして、
アパート周辺を彷徨うように歩いた。
それでも、叶夢は見つからない。
叶夢が見つけられないまま1週間を過ごした日、
俺は何度運んでいるアパートの敷地内に見覚えあるロゴマークを見つけた。
もしかしたら、彼女見つけられるかもしれない。
彼女が消えた日から、止まってしまっていた俺の時間に、
ほんの少しだけ光が見えた気がした。