【B】眠らない街で愛を囁いて
23.恋するビルの秘密 -叶夢-
「叶夢」
とらと一緒に村の中を散歩していた私に、
ずっと聞きたかった声が響いた。
いつもは警戒して吠える、
とらが尻尾を横にぶんぶんふりながら、ワンワンと嬉しそうに吠える。
「嘘……。千翔……さん……」
思わず口元に手をあてながら涙が溢れだしてくる。
「叶夢、その子が『とら』か?
確かに大きくて、ふっさふさだな」
そうやって千翔さんは、とらの傍に座り込むと両手でわさわさの撫で始めた。
とらが初対面で他人に撫でさせるなんて初めてで私もびっくりしてしまう。
「おいっ、とら。そろそろ叶夢を抱きしめてさせてくれよ。
お前とはまた後で遊んでやるから」
その声の後、私は千翔さんに真正面から両腕に抱きしめられた。
「叶夢……やっと見つけた……。
貴江の件では、叶夢を傷つけた。
異母妹は養父が暁兄の手配した病院に入院させた。
治療が進んで退院した後は、貴江は海外で暮らすことに決まっている。
全部片づけたから、ようやく迎えに来れたんだ。
叶夢……もう一度、俺の傍に戻ってきてほしい」
抱きしめながら千翔さんは、今までのことを教えてくれた。
「……千翔さん……」
「それに……やっぱり俺の体質は叶夢の存在が必要みたいだ。
叶夢と出逢って狭間に捕らわれることがなくなったって前に話しただろ。
叶夢が居なくなった途端に、また狭間に何度も何度も捕らわれた。
何度も何度もクラクションをならされて怒鳴られた。
あんな生活してたら、何時かは事故で殺されてもおかしくないな。
今までの俺は、ずっとそれが当たり前で、叶夢と出逢うまでは逃げる術がないって諦めてたんだ。
だけど……今は、叶夢と出逢ってしまったから。
叶夢、東京に帰ろう。
それで叶夢の両親にも許可を貰って一緒に暮らさないか?
結婚を前提に……。
叶夢、俺には叶夢以外生涯のパートナーは考えられない。
……愛してる……」
千翔さんの『愛してる』は、私の耳元で囁かれる。
この声が聴きたかった。
この温もりが欲しかった。
この匂いが……嗅ぎたかった……。
目の前に千翔が存在する。
そのことを私の全身が感じてる。
「ワンワン。ワンワン」
抱き合う私たちに、とらが大きな体で仲間に入れろよっとでも言うように抱き着いてくる。
「おぉ、そうだな。
とらも一緒に行こうな」
仲良くなった、とらにも千翔は言葉を続けた。
「……叶夢……返事が聞きたい。
叶夢は今も俺のことが好き?」
バカ。
なんでそんな質問するのよ。
「……すっすっ……好き……です」
照れくさくて顔が一気に赤面してるのを感じる。
「はい。良く出来ました」
その声と共に、再び強く抱きしめられた私の唇に千翔は自らの唇を重ねて、
上唇と下唇の間を器用に割って、自分の唇を滑り込ませてきた。
千翔の舌が私の歯列を辿って、舌に絡み合っていく。
それだけで真っ白になって、体の力が抜けていくのを感じる。
とらと一緒に村の中を散歩していた私に、
ずっと聞きたかった声が響いた。
いつもは警戒して吠える、
とらが尻尾を横にぶんぶんふりながら、ワンワンと嬉しそうに吠える。
「嘘……。千翔……さん……」
思わず口元に手をあてながら涙が溢れだしてくる。
「叶夢、その子が『とら』か?
確かに大きくて、ふっさふさだな」
そうやって千翔さんは、とらの傍に座り込むと両手でわさわさの撫で始めた。
とらが初対面で他人に撫でさせるなんて初めてで私もびっくりしてしまう。
「おいっ、とら。そろそろ叶夢を抱きしめてさせてくれよ。
お前とはまた後で遊んでやるから」
その声の後、私は千翔さんに真正面から両腕に抱きしめられた。
「叶夢……やっと見つけた……。
貴江の件では、叶夢を傷つけた。
異母妹は養父が暁兄の手配した病院に入院させた。
治療が進んで退院した後は、貴江は海外で暮らすことに決まっている。
全部片づけたから、ようやく迎えに来れたんだ。
叶夢……もう一度、俺の傍に戻ってきてほしい」
抱きしめながら千翔さんは、今までのことを教えてくれた。
「……千翔さん……」
「それに……やっぱり俺の体質は叶夢の存在が必要みたいだ。
叶夢と出逢って狭間に捕らわれることがなくなったって前に話しただろ。
叶夢が居なくなった途端に、また狭間に何度も何度も捕らわれた。
何度も何度もクラクションをならされて怒鳴られた。
あんな生活してたら、何時かは事故で殺されてもおかしくないな。
今までの俺は、ずっとそれが当たり前で、叶夢と出逢うまでは逃げる術がないって諦めてたんだ。
だけど……今は、叶夢と出逢ってしまったから。
叶夢、東京に帰ろう。
それで叶夢の両親にも許可を貰って一緒に暮らさないか?
結婚を前提に……。
叶夢、俺には叶夢以外生涯のパートナーは考えられない。
……愛してる……」
千翔さんの『愛してる』は、私の耳元で囁かれる。
この声が聴きたかった。
この温もりが欲しかった。
この匂いが……嗅ぎたかった……。
目の前に千翔が存在する。
そのことを私の全身が感じてる。
「ワンワン。ワンワン」
抱き合う私たちに、とらが大きな体で仲間に入れろよっとでも言うように抱き着いてくる。
「おぉ、そうだな。
とらも一緒に行こうな」
仲良くなった、とらにも千翔は言葉を続けた。
「……叶夢……返事が聞きたい。
叶夢は今も俺のことが好き?」
バカ。
なんでそんな質問するのよ。
「……すっすっ……好き……です」
照れくさくて顔が一気に赤面してるのを感じる。
「はい。良く出来ました」
その声と共に、再び強く抱きしめられた私の唇に千翔は自らの唇を重ねて、
上唇と下唇の間を器用に割って、自分の唇を滑り込ませてきた。
千翔の舌が私の歯列を辿って、舌に絡み合っていく。
それだけで真っ白になって、体の力が抜けていくのを感じる。