キミのトナリ
5.あとがき
予測はしていたけれど、やっぱり彼はこの世にはもう存在していなかった。
再発からあっという間のことだったようだ。
彼は逝く少し前まで日記を書いていたようで、直子さんが彼の隣にいて本当に支えられて幸せな最期だったんだとわかった。
彼から逃げたことはやっぱり悔いが残っているけれど、彼がそんなに素敵な女性に見送られたことがわかって本当によかった。
だけど、恋人が読ませたかったのはそんなことだけだったんだろうか。
腑に落ちない気持ちで顔を上げる。
自分のパソコンを持ち込んで仕事をしていた彼が私の視線に気づいた。
「最後まで読んだ?」
「うん……」
「あとがきまで?」
私は首を横に振る。
「なんだよ。あとがきまでちゃんと読めよ」
「わかった」
私の返事をきくと、今度は彼は作業を中断し、私の隣に座った。