キミのトナリ
4.君の隣にいる人
あの日以来彼に会っていない。
好きだった。別れたくなかった。
だけど、彼と一緒に病気と闘うことができるのか。
正直自信がなかった。
彼はきっと私のそういう弱さを見透かしていたんだろう。
だけど、彼の日記には私を責めるどころか、私をかばうことばかり綴られていた。
今までの俺だったなら、彼女を抱きしめて慰めてあげられていた。
だけど、俺も治療の副作用で心身ともに弱っていたし、なによりも自分のことでいっぱいいっぱいだった。
だから、思わず「別れようか」と言ってしまった。
彼女を支えることもできない。
彼女の隣にいる資格なんてない。
彼が退職し地元に帰ったことを知ったのは随分後のことだった。
彼の意向でしばらく伏せられていたらしい。
知っていたのはごくわずかな人間だけだった。
そして、その人間の中から私は外されていた。
「どうして教えてくれなかったんですか!」
事実を知った時、矢野さんに詰め寄った。
「三角には教えないでほしいって強く言われていたんだ」
「ひどい!ひどい!」
ひどいのは目の前の矢野さんでも彼でもない。
他でもない私だ。
自分から逃げておいて、彼や矢野さんを責めている。