誰にも言えない秘密の結婚



後藤さんの顔から笑顔が消え、驚いた顔で私を見た。



「瀬名、誰かと間違ってるのか?」



社長が冗談っぽくそう言った。



「えっ?いや、そんなはずは……」


「私が通っていた中学校は生徒数も多かったので、えっと、その……卒業するまで名前も知らない、顔も知らない人もいて……」


「あぁ、そういうことってあるよね。俺が出た中学校もそうだったわ。卒業後に街で声かけられても、誰?みたいなね」



社長はそう言ってクスリと笑った。


私は社長の言葉に頷く。


でも嘘だった。


中学校の生徒数なんて多くなかった。


1クラス30人程度で、2クラスしかなかったから。





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