誰にも言えない秘密の結婚
どれくらい時間が経ったのかな。
テーブルに並べられた料理もほとんど食べ尽くしてしまった。
「いつまでも新婚さんを拘束しておくのも悪いし、そろそろお開きにしようか」
社長はそう言ってクスッと笑った。
そう言われて初めて時計を見る。
2時間。
ここに来て、もうそんなに時間が経ってたんだ……。
「結婚祝いをやろう」
ここの食事が結婚祝いじゃなかったの?
「はい、明ちゃんに結婚祝い」
「えっ?私に、ですか?」
「うん」
そう言って、社長は座椅子ごと身体を少しずらした。
真正面に見えたのは、透明なフィルムに包まれ、リボンで可愛くラッピングされた大きなクマのぬいぐるみ。
この個室に入ってきた時に見えていたけど、てっきり生まれたばかりの子供さんへのプレゼントかと思ってた。
まさか私への結婚祝いだったとは……。
「こんなデカイもの、どうやって持って帰るだよ」
藤原さんはそう言ってクスクス笑ってる。
「お前が抱えて持って帰ればいいだろ?それで俺みたいに周りからクスクス笑われろ」
社長はそう言ってケラケラ笑ってる。
まぁ、確かに大人の男性がこれを持って歩いてたら周りからクスクス笑われてもおかしくないかも。
「罰ゲームかよ」
藤原さんはポツリとそう呟いた。