誰にも言えない秘密の結婚
「明?ご飯、出来たよ」
拓海さんがそう言って部屋に入って来た。
ベッドから身体を起こす。
「病み上がりだからアッサリしたものがいいと思って、うどんにしたよ」
拓海さんがベッドの側に来て、丼の乗ったトレイを床に置いた。
「あ、テーブル……」
私はベッドから出ようとしたけど、拓海さんに止められた。
部屋の隅に置いてある小さなテーブルを拓海さんがベッドの側に持って来て、その上にトレイを乗せる。
丼から小皿に取り分け、それを渡してくれるのかと思ったら……。
「はい、あーん。熱いから気を付けてね」
拓海さんがうどんをフーフーして、私の口元に持って来た。
「ひ、1人で食べれますから……」
「遠慮しなくていいの」
遠慮とかじゃなくて、恥ずかしい。
「あーんして?」
私は口を開ける。
誰かに食べさせてもらうなんて、幼稚園以来かもしれない。
ドキドキして恥ずかしくて、うどんが上手く啜れないけど、なんとか食べれた。