誰にも言えない秘密の結婚
「さてっと、冷えてきたし、そろそろ帰ろっか?」
藤原さんはそう言って、ベンチから立ち上がると背伸びをした。
「そうですね」
私もベンチから立ち上がる。
「アパートまで送って行こうか?」
「じゃあ、ついでに晩ご飯でも食べて行きます?」
なんて言っちゃったけど、迷惑だったかな?
もしかして軽い女だと思われたりして……。
「ホント!?……って、言いたいところなんだけど……これから事務所に戻って仕事しなきゃいけないんだよね……」
「そ、そうなんですね……」
「昨日、空翔は休めなんて言ったけどさ」
藤原さんはそう言ってクスッと笑った。
晩ご飯でも一緒に、なんて言ったことを後悔したくせに、今は何だか少し寂しさを感じる。
「吉田?どした?」
それを察したのか、藤原さんは私の顔を覗き込むようにしてそう聞いてきた。
「な、何でも、ないです……」
「寂しい?」
「えっ?」
「ゴメンね。今は仕事が立て込んでて……。もう少ししたら落ち着くから、その時には沢山デートしよう。な?」
藤原さんはそう言って優しい笑顔を見せると、私の頭を撫でてきた。