ミツバチのアンモラル
時刻は十八時。
優花のお宅からの帰路、端っこを陣取れた電車の中でこれまでの数々の流れた告白を反芻する。
何度も何度も、圭くんは私を遮った。かわした。本当に酷い。大事な妹の想いを断るのが辛いとかだとしても、酷い。
何度も何度も、慣れることなく傷ついたけど、それを受け入れたのも私自身なんて、本当キモい。
圭くんを好きで二十四年。もう、産まれた瞬間からカウントしても許してほしい。
一度目の告白タイミングは、高校の卒業式の日。
……けれど、それは前日に虚しく実行不可となったけれど。
あのときはここまで拗れていなかったと思う、と当時を思い出し、そうして、この日の実行不可となった出来事を境に、圭くんは私を殊更妹として扱うようになったと確信している。
何故か溺愛は激しさを増し、過保護にもほどがある囲い込み。まるで私をお姫様のように扱う圭くん。
王子様な圭くんが、私をお姫様のように大切にする。
けれど圭くんは、私を本当の意味でお姫様にはしてくれなかった。
「……」
何故だろう。
卒業式の前日、圭くんは確かに、私の気持ちをぶつけられる覚悟はしてくれたはずなのに。
私との約束に頷いた。
卒業式が終わったら話がしたい。圭くんに伝えたいことがあるからちゃんと聞いてほしいと言った私に、圭くんはもう理解している表情で、頷いたのに。
その直後に私に起きた事故のあと、気づいたときには、それはもう白昼夢のように消えてしまっていた。
病院のベッドで目を覚ました私の傍らで泣いていた圭くんは、しきりに、訊いてもいないのに、私のことを何よりも大事な妹だと言った。一生かけてこれからは妹を大事にすると。