ミツバチのアンモラル
圭くんの心配加減が相当だったこともあり奇跡の生還かと思っていたら、重傷は重傷だけれど、命に別状はなかったらしい。事故後、脳のレントゲン等で何度か病院に通うくらいには大事故だったんだと、思い出すと今でも怖くなるけど。
両親に泣かれ抱きしめられ、慰謝料ふんだくってやると父は怒り狂っていた。
智也も、私がこんなだから行きたくないとごねたけど無理矢理出席させられたらしい卒業式終わり、汗だくで駆けつけてくれた。下手こいた現場に居合わせてしまったことを謝ると、必要ないのに責任を感じるような悔やんだくしゃりとした顔は、その皺の位置や仕草が圭くんと似ていた。
数日経ち、お見舞いに来てくれた友達とは、偶々無傷だった顔面に皆で手を合わせて感謝してから、卒業写真を病室で何枚も撮った。
起き上がれなかったのは最初の二日。あとは、固まってしまわないように少しでも動けとお達しがあったこともあり、点滴お供に散歩するようにベッドの周りを最初に歩いてみた。
そんなこんなで、診察やら検査やらお見舞いやらで目まぐるしい一ヶ月ほどは、あっという間に過ぎていく。その頃には退院もしていて、松葉杖で大学に通う準備を進めていた。
足の指を複雑骨折していて、それがくっついても、長時間の歩きになると違和感を感じる私に、圭くんはまた目を充血させるから今もそうだけどもう秘密。
事故の直後からずっと傍にいてくれたらしい。兄弟そろって、責任感じさせて申し訳ない。
卒業式に出席出来なかったこと、大学の入学式も同様で欠席、進路や居住地が別れてしまう友達との日帰り旅行の中止等、私よりも圭くんが悔やんでしまい、気にしないでと言うと、何故か圭くんは更に悔やんで綺麗なかんばせを歪ませる。
事故後、そんな圭くんは、私を事故前より大事にするようになった。
頑丈で柔らかな繭で包んで、私をなにものからも守るように。